「日本の原風景」、初めて訪問した朽木村で一時を過ごし、そんな感慨を持ちました。
若狭国小浜と京の都を最短で結ぶ交通の要衝朽木は、平安の時代から魚介類や農産物の交易が行われ、一名「鯖街道」とも呼ばれました。

インバウンドの受入れで賑わう妻籠や馬籠と比較しても勝るとも劣らない歴史、風格を有しているのにあまり主張のない奥ゆかしさ、ほのぼの感を抱かせる街並みです。春はタンポポや桜、そしてウグイスが、夏は田畑や周囲の山々が迫り上がる濃密な緑、秋は鮮やかな紅葉と季節の産品が目白押しです。冬の楽しみスキー場や温泉施設もあります。

こんな素晴らしい朽木の人口が、2004年2,499人、2023年1,559人、この20年間で940人減、なんと人口が40％近く減少したのです。この数字を延長すると今後の40年間で人口はゼロになります。（それはないでしょうが。）初穂会のある関東は、多くの地域で介護施設の新設計画、増床計画があり、都会は若年者だけではなく、高齢者もあふれんばかりの状況です。

私たち社会福祉法人初穂会の最大のミッションは、福祉を通して社会課題を解決することだと考えていますが、ここに大きなテーマが見えてきました。人口減で絆が弱まりつつある地域では、施設運営の重要さとともにサロンや集いの場、さまざまなボランティア活動、買い物支援、移送、生活支援に至るまで、命のセーフティネットの必要性が身近な喫緊のテーマとして見えてきました。

しかし、私たちが単独で出来ることは限られています。一つずつ着手し、10年20年先を見据え、安全・安心のセーフティネットの役割を担えるよう努めてまいります。まずはこの町に住んで良かった、この町で人生を終えたい。そして自分の人生も満更ではなかったな、と幸せ感を持って命を全う出来る、そんな支援が出来たらと私ども職員一同は願っております。今後ともよろしくお願い申し上げます。

理事長　林　隆春